暗号の専門家ではないAIエンジニアが、OpenAIのGPT-6 Astraを使い、ナポレオンの命令で1809年に書かれた暗号書簡を解読しました。鍵が失われ217年間読めなかった文書を、1枚のスキャン画像から約6時間で読み解き、結果は専門家の検証も通っています。


ニュースサマリー
何が起きたか
カーター・チャーチ氏は2026年9月18日、自身のブログで、ナポレオン戦争期の暗号書簡をGPT-6 Astraで解読したと公開しました。書簡は1809年、ナポレオンの指示で、アドリア海の対岸に孤立していたマルモン将軍へ送られたものです。受け手側の鍵が失われ、未解読の歴史暗号として知られていました。
主な内容
手がかりは、1969年の仏軍事史誌に載った低解像度のスキャン画像1枚でした。
GPT-6 Astraが画像を行ごとに切り分けて記号を読み取り、その後に暗号の解析へ進みました。
過去の研究で分かっていた33文字分の鍵を出発点に、19世紀フランス語の統計で残りの記号を推定しました。
ナポレオン関連の文献を除いて再計算しても同じ結果になることを確かめ、検証用のプログラムも公開しています。
報告されている成果
約1,300文字・155種類の記号の対応表を復元(5つは読みが未確定)
文書の作成年を、従来の1807年から1809年3月下旬に修正
東京在住の暗号研究者が運営するデータベースで「解読済み」に登録
運営からのコメント
なぜ今、このニュースが重要なのか
チャーチ氏自身、根気のある専門家なら1970年の時点でも解けた暗号だと認めています。材料はすべて公開されていました。それでも読まれずに残ったのは、記号の読み取り、古いフランス語、統計解析をこなせる人の数週間を、1通の手紙に割く余裕がなかったからです。AIがこの手間を数時間に縮めたことで、「やればできるが、誰も手を付けられない仕事」が動き出しました。企業にも、費用に見合わず後回しにされてきた調査や整理の仕事が、同じように眠っています。
最大のポイント
見落とされやすいのは、解読の速さよりも「確かめ方」の丁寧さです。チャーチ氏は、AIの提案した読みを画像上の同じ記号すべてと照らし合わせ、矛盾がないものだけを採用しました。さらに答えを知っている可能性のある文献を除いて再計算し、外部の専門家にも確認を依頼しています。読みが不確かな5つの記号も隠さずに示し、第三者が同じ結果を再現できる形で公開しました。AIの出力を業務で信頼できるかどうかは、モデルの性能だけでなく、こうした検証の設計で決まります。
企業がいま取り組むべきこと
まず、社内で「人手が足りず後回しになっている作業」を3つほど書き出してみてください。たとえば、古い紙の帳票や手書き記録のデータ化、過去の契約書の条件の洗い出しなどです。1つ選んでAIに処理させる際は、答えが分かっている数件を混ぜて正答率を測る、結果の一部を人が原本と突き合わせる、自信のない箇所をAIに明示させる、の3点を最初に決めておきます。検証の手順を先に作っておけば、結果を安心して業務に使え、上司や関係部署への説明もしやすくなります。
出典

小松怜
Advanced AI Partnersのコンサルタント。生成AIニュースの執筆を担当し、国内外の生成AIの最新動向を企業の実務目線で解説しています。


