2026年10月13日、東京で国際産業AIカンファレンス(IIAC)2026が開かれ、工場や設備を動かすAIを誰が所有し、制御するのかが議論されました。日本の製造業データの価値に加え、データを手元に残したまま最先端AIを共同で育てる構想も紹介されました。


ニュースサマリー
IIAC 2026とは?何が議論されたか
2026年10月13日、東京・神谷町で「国際産業AIカンファレンス(IIAC)2026」が開催されました。テーマは「産業AIの主権」で、工場や設備を動かすAIを企業や国が自ら所有し、制御できるかが議論されました。深層学習の先駆者でチューリング賞受賞者のヤン・ルカン氏らが登壇しています。
主な内容
米Aitomaticのクリストファー・グエンCEOは、日本の製造業に足りないものとして、自らの優位性への認識と自信を挙げました。
ASI Foundryのジミー・リー会長は、日本の製造データには独自の価値があるが、生かすには先行者として素早く動く必要があると述べました。
JSRの永井智樹氏は、AIには化学へのより深い理解が必要で、企業のノウハウを研究開発の業務に組み込むことが重要だとしました。
最先端AIの利用と主権を両立させる取り組みとして「Project Tapestry」が紹介されました。
Project Tapestryの進捗
非営利団体AI Allianceの計画で、各参加者はデータを手元に置き、モデルの重みだけを共有して共同学習
2026年9月1日、3カ国4拠点で学習データを移さずに120億トークンの追加学習を完了
2026年末に最初の基盤モデル、2027年前半に産業や政府での初期導入を計画
運営からのコメント
なぜ今、このニュースが重要なのか
最先端のAIモデルは、米国などの限られた企業が開発しています。企業がその性能を業務で使おうとすると、自社の知識やデータを外部のAIに預けることになりかねず、利用をためらう声も少なくありません。とくに日本の製造業が持つ設備データや実験結果、熟練者のノウハウは、競争力の源泉そのものです。AIを使うか、データを守るかという二者択一ではなく、両立させる道を探る議論が、日本で国際会議として行われたことに意味があります。
最大のポイント
注目すべきは、データを渡さずにAIを共同で育てる仕組みが、構想から実験段階に進んでいる点です。Tapestryは9月、インド、オーストラリア、米国の拠点間で、学習データを一切移さずに追加学習を終えました。またルカン氏は、言語やコードを扱うより、現実世界を理解する方がはるかに難しいと指摘しています。工場で働くAIほど、文章ではなく現場のデータが性能を左右します。その意味で、日本企業が持つ現場データの価値は、今後さらに高まる可能性があります。
企業がいま取り組むべきこと
まず、自社にどんな現場データがあるかを書き出してみてください。設備のセンサー記録、検査結果、実験データ、作業手順書や熟練者のメモなどです。それぞれについて、保管場所、形式、社外に出してよいかの区分を表にまとめます。そのうえで、外部のAIサービスに渡してよいデータと、社内でしか使わないデータの線引きを決めておくのがおすすめです。この線引きがあれば、新しいAIサービスや共同の取り組みに声がかかったとき、すぐに参加を判断できます。
出典

小松怜
Advanced AI Partnersのコンサルタント。生成AIニュースの執筆を担当し、国内外の生成AIの最新動向を企業の実務目線で解説しています。


